止まり木の雑記帳

feeと仔月の対談


*短編集の『死神の精度』は『』で、表題作の「死神の精度」は「」で表記します。



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点数表につきましてはこちらをご覧ください。



☆『ゼロアワー』

 

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fee「舞台は平和な地球。子供たち(小学校低学年)が侵略ごっこという、楽しそうな遊びをしています。

母親のモリス夫人が視点人物で、娘のミンクの侵略ごっこを見守っている。ミンクにはドリルという新しいお友達ができたらしいのですが、そのドリルちゃんという子がちょっと怪しい。遠距離電話でママ友と話すと、遠方でもドリルちゃんという子がいて侵略ごっこが流行っている……つまり、全米で大流行しているんです。
このドリルの正体が実は火星人。子供たちを利用して地球侵略をひそかに企んでいます。その日の5時、『ゼロ・アワー』という約束の時間になると、ドリルが本性を現し、地球の子供たちを引き連れて侵略が開始されます。子供たちが50人もやってきて、『大人はどこだぁ~』と地球人狩りを開始する。隠れたママとパパが、ミンクに見つかるところで物語が終わります」

 

仔月「そうですね!。『いないいないばあ』で終わりますw」

 

fee「子供の怖さが描かれているホラーということで、『草原』に、少し近いものを感じました」

 

仔月「ぼくも『草原』を思い出しました」

 

fee「『草原』とは別種の怖さがあって。子供って怖い遊びをやっていますよね。蟻の巣を埋めたりとか」

 

仔月「水を流し込んだりとか(苦笑)」

 

fee「意味もなく葉っぱをむしったりしていた記憶もありますし。残酷で、大人から見たら意味が解らない事を子供はやりますね」

 

仔月「まぁ……ですよね……」

 

fee「楽しいからやるんです。楽しいから葉っぱをむしる。そこに、『残酷だからやっちゃいけない』とか、『他人からどう見られるか』なんて気にしない。まぁ、だから子供は楽しいんですw 他人に迷惑をかけまくって平気な人は、迷惑極まりない獣みたいな存在ですが、でもだからこそ本人は楽しいんですよ。……僕は小心者でつまらない大人だから、マナーを守りますけど、迷惑千万なクソガキ時代の方が楽しかったですね」

 

仔月「確かに……」

 

fee「そんな小学校低学年がやりそうな、『侵略ごっこ』という遊びを子供たちがしているんですが、実際にはこれは本当に火星人の侵略だったという。この侵略は、防げないですよね。見破れない」

 

仔月「火星人の侵略がとても巧妙ですよね」

 

fee「文化侵略という意味では、『コンクリートミキサー』とも似ています。こちらの『ゼロアワー』の方が怖いし、作品としても好きですが……」

 

仔月「うん(同意)」

 

fee「子供の描写も良いですしね。ちょっと大きい子は入れてあげないとか」

 

仔月「子供特有の残酷さみたいなものが顕著に描かれています」

 

fee「12歳の少年ジョゼフは、なんで女の子たちの侵略ごっこに混ざりたかったんでしょうw 『おおい、ジョー! こっちへ来いよ! 女の子なんか、かまうな!』と同年代の男子に言われてるし。12歳くらいの年頃だと、【女の子なんか相手にすると格好悪いぞ】みたいな。7~8歳ぐらいなら、別に女の子と遊んでも問題ないのに。高学年になると冷やかされるんですよね……」

 

仔月「覚えあります……」

 

fee「別に誰と遊んだっていいじゃん、と僕は思っていました。女の子と遊ぶのも楽しいのにアホかよ、とか思いながら。でもバカにされるのは嫌だし……という小心な子供でした……」

 

仔月「バカにされた時、遊んでいる相手の女子に悪いなとか思ってしまって、色々難しかったです」

 

fee「そこで堂々と女子と遊べるぐらい肝が据わっていれば、今頃モテモテだったはずなんですが……」

 

仔月「はははwww」

 

fee「女子と遊んだらバカにされるのってなんなんですかね……。女性に免疫がなくなっちゃっうし、あの辺りで男性文化と女性文化が分断されて、良い事は何一つないのになぁ。

……話を戻しますが、ジョゼフはなぜ年下の女の子に混じって侵略ごっこをしたかったんだろう。ミンクちゃんが好きだったのかな?」

 

仔月「はははww」

 

fee「まぁ、とにかく色々よくわからない遊びをしていたんですね。言う事を書き取らせたり、かき集めてきたガラクタで機械らしきものを作ったり、『ごっこ遊び』にしてはレベルが高いな……」

 

仔月「ですよね」

 

fee「『世界中いたる所に、平和に馴れ切った人々の自負心とやすらぎがあり、もはや二度と争いは起きないという確信があった』らしいですからね。
『地球中の全人類は、手に手をとりあって、かたく団結していた。核兵器はあらゆる国家によって共同管理されていた。人類のなかには、一人の裏切り者も、不幸な人間も、不平分子もいなかった』

 

仔月「ははははww」

 

fee「いつものブラッドベリらしくないですねw いつものブラッドベリなら地球は核戦争をしていて、火星には侵略に行く側なのに。火星から侵略されるのは珍しい」

 

仔月「他の作品、たとえば『火星年代記』にはこういう話はなかったんですか?」

 

fee「『火星年代記』は地球から火星に侵略しに行く話です。地球で核戦争が起きていて、地球は破滅してしまいます」

 

仔月「基本的に破滅しがちですよね。じゃあ今回の『ゼロアワー』のパターンは結構レアというか、他に例を見ない?」

 

fee「*ブラッドベリ作品を全部読んでいるわけじゃないので断言はできませんが、結構レアだと思います。愚かで荒くれている地球人がよその国に侵略に行くパターンがほとんどで、悪そうな宇宙人に侵略される話はほとんどないですね」

 

仔月「あぁ~」

 

fee「火星人の存在も含めた、子供たちの遊びという可能性はありますか? ないか……爆発も起きてるし」

 

仔月「子供たちの遊びだとすると、同時的に世界各地で同じ遊びが発生しているのが不可解かなと」

 

fee「そこはまぁ『トイレの花子さん』が日本中にいる感じで。複数の猿が芋を洗い始めると、世界同時多発的に猿が芋を洗い始める、みたいな」

 

仔月「シンクロニシティでしたっけ?」

 

fee「それそれ!」

 

仔月「そういう切り口ならあるかもしれませんね」

 

fee「まぁでも普通に考えれば火星人の侵略か。あと、すごくどうでもいいところで、この家は50人も子供が入れるんですね」

 

仔月「50人となると相当デカいですよね」

 

fee「ぎっしり入ったとしてどうなんだろう? 不愉快じゃないレベルで人が入るとなると50人は絶対無理なんですが。立錐の余地もない満員電車状態だと仮定して、僕の家、50人も入れるかなぁ……? とか考えてしまって。アメリカは土地が余っているんだなぁ」

 

仔月「はいw」

 

fee「キャラ話をすると、ヘンリー(父親)がバカっぽいw 『だれだろう、ことわりもなしに他人の家にあがりこんで』『だれだ、入って来たのは』妻が静かにしてって言っているのに騒いでいます」

 

仔月「妻が鍵を投げ捨てたシーンなんですが……

二人は屋根裏部屋に駆けこんだ。モリス夫人はドアをぴしゃりとしめ、鍵をかけ、その鍵を手のとどかない片隅へ投げ捨てた。『気がくるったのか。どうして鍵を捨てたんだ。おい、しっかりしろよ!』。

なぜ鍵を捨てたんでしょうか?」

 

fee「うーん。わからない。夫が勝手に出て行こうとするかもしれないから? ……かけるのはともかく、鍵を捨てる理由はないですよね」

 

仔月「妻も動転していたんでしょうか? 突然侵入されて」

 

fee「それもありそうですね……それにこの夫、馬鹿そうですから。『俺は出ていくぞ!』ってなっちゃうかもしれません。『だれだ、入って来たのは』『何者だ!』って言っているのに、その9行後には『モリス夫妻は屋根裏部屋で抱き合ったまま、ものも言えずにふるえていた』って。さっきまで威勢が良かったパパなのに、突然震え出しちゃってどうしたんでしょうか。『ひどく重々しい足音』が階段を上がって来たので、ビビったんでしょうか」

 

仔月「はははww」

 

fee「『先頭に立っているのはミンクらしい』とありますが、どうしてモリス夫妻にそれがわかったんでしょう? まぁミンクで合っているんですけど。鍵穴から覗きでもしたのかな?」

 

仔月「www」

 

fee「2行後に、『先頭はミンク』ともう一度書いてあります……。この小説は一応、三人称ですけど、ほとんどのシーンがモリス夫人の視点なのに、ここだけなぜ完全第三者視点になっている。
『らしい』ならともかく、断定はマズくないですか?」

 

仔月「あぁ~~」

 

fee「三人称作品なので、視点をコロコロ切り替えたって問題はないんです。ここだけミンク視点でも良いんですけど……。2行前には『先頭に立っているのはミンクらしい』と書いてあって」

 

仔月「『らしい』は主観ですよね」

 

fee「そう。モリス夫人かヘンリーの主観です。普通に考えるならモリス夫人でしょうね」

 

仔月「主観だとすると、なぜわかったのかという問題が出てくるし……」

 

fee「2行後には『先頭はミンク』と、こちらは断定になっている……」

 

仔月「ははははw」

 

fee「まぁ、面白さには影響ないし、『こまけぇこたぁいいんだよ!』で流してもいいんです。ただ、色々視点の問題についてうるさい人はうるさいので、こういう処理をすると容赦なく批判する人はいるでしょうね。僕はスルー出来ますけど、どうですか?」

 

仔月「普通に気づきませんでしたw 言われてみれば確かに、と思うんですけども」

 

fee「評価には影響しないのでアレですが、『先頭はミンク』という断定はなくても全く作品内容に影響はないので、個人的にはこの一行はカットした方が良いと思いました」

 

仔月「あぁ~」

 

*『華氏451度』、『何かが道をやってくる』、『ウは宇宙船のウ』、『火星年代記』、『たんぽぽのお酒』、『メランコリィの妙薬』、『とうに夜半を過ぎて』、『10月はたそがれの国』、『太陽の黄金の林檎』、『刺青の男』(本書)を読了。逆に言えばそれ以外は読んでいません(1つぐらい忘れているかもしれませんが)。

 

 


 

 

☆『ロケットマン』

 

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fee「この短編集には珍しく、1人称の小説です。主人公は14歳のダグラス君。お父さんとお母さん、3人の物語です。お父さんは宇宙飛行士で、3か月に1回しか家に帰ってきません。たまに帰ってきて、最初の1日目は空を眺めない。2日目になると空を眺めるようになって、3日目の夜になるといつまでもポーチに座っている。4日目になるともう宇宙に行ってしまう。お母さんはそれを引き留めたい。ダグラス君はロケットマンに憧れているけど、お父さんに家にもいてほしい。そういう複雑な葛藤があります。

お父さんがいない間は、お父さんをいないものとして2人で生活しています。ラストは、お父さんが太陽に落ちて亡くなったという電報が届いて、その後、太陽が出ている間は外出せず、『ぼくたちは朝ごはんを夜中にたべ、昼ごはんを午前三時にたべ、晩ごはんを午前六時といううすら寒い時刻にたべた。終夜興行の映画館に行って、夜明けにベッドに入った。そうして永いこと、太陽の見えない雨ふりの日にだけ散歩するのが、ぼくたちの習慣だった』というエンディングです」

 

仔月「お母さんに感情移入して読みました。お父さんをいないものとして生活するところから、お母さんの辛さがこれでもかと伝わってきまして」

 

fee「よりによってパパは太陽に落ちてしまいましたね……」

 

仔月「太陽に落ちられると、どうしょうもないです……」

 

fee「完全に昼夜逆転になってしまいました……」

 

仔月「母親の描写が全般的に良くて。

『母さんの髪の毛は、ちいさな女の子の髪みたいに風になびいた。母さんは台所のいろんな器械のスイッチを切って、自分でおいしいケーキやパイやクッキーを焼く。そして父さんの目をじいっとのぞきこんで、ほんものの笑い方をする。でも、そんな日が何日かつづくと、しまいに母さんはきっと泣き出すのだった』

というシーンも、落差が印象的でした。お父さんの事を本当に愛しているからこそ、お父さんとの交流を幸せに感じている。けれど、いないものとして扱わないとその後が辛くなる、という葛藤が伝わってきます」

 

fee「お母さん、かわいそうですね」

 

仔月「ですよねぇ」

 

fee「折角素敵な話に茶々を入れるのも良くないけど、お母さんはお母さんで違う男を探せば良いんじゃないかしらん。お父さんは3か月に1回しか帰ってこないから、その間不倫してもOKなのでは? って思っちゃいますけど……こんな素敵な話にそんな事を言うのもね(じゃあなぜ言った……)。お母さんが健気だから良い作品なのであって、お父さんのいない間好き放題男遊びしていた話だったら、全然感動しませんからね……」

 

仔月「ww」

 

fee「くだらない事を言ってすみません。話を戻しますが、お父さんが悪い、ですか?」

 

仔月「ロケットマンというのはお父さんの仕事ですよね? ロケットマンの収入がいくらかはわかりませんが、辞めることができるようなので、ある程度の経済的余裕もあるのかな? その場合問題になってくるのは、本来行かなくても良いのに凄い頻度で夫が仕事に行っている。夫が家庭を顧みる必要がどの程度あるか、というのが問題になってくると思うんですが」

 

fee「ロケットマンは仕事ですけど、日本のブラック残業マンのイメージとは違うと思います。お父さんは、仕事だから行っているわけではなくて、自分が好きだから行っているんですよ。収入とかそういう生臭い話じゃなくて、宇宙が恋しいから宇宙に旅立っちゃう」

 

仔月「あぁ~」

 

fee「1日目は空を眺めないけど、2日目には空を眺めるようになって、3日目の夜になるといつまでもポーチに出てぼーっとしてしまう。次の日の朝にはお父さんは出発してしまう、ということで、お父さんは自分が行きたいから行っているんです。

指令が来たから行くとか、呼び出しがあったとか、週に3回宇宙に行くよう契約しているとか、そういう話ではなくて、お父さんが好きな時に宇宙に行っている。だから、この場合は【仕事】というフレーズはひとまず考えない方が良いと思います。

このお父さんは、夢を叶えた人です。夢を追ってキラキラしているバンドマンで、いつも全国ツアーで家にいないとか。冒険家でいつも秘境を冒険していて、たまに日本に帰ってくると『やっぱり我が家が落ち着くね!』とか言うんだけど、3日ぐらいするとソワソワしてきて、『旅が俺を呼んでいる!』みたいな。そういう人なんじゃないでしょうか。そういうふうに言うと、お父さんのわがままという見方もできますけど」

 

仔月「出来ると思います」

 

fee「でもこのお父さんは、そういう性というか、宇宙依存症だと思います。家にいると宇宙に行きたくなる、宇宙にいると家に帰りたくなる」

 

仔月「確かに書いてありました」

 

fee「これは凄く寂しくて、切ない。僕はお父さんの気持ちも解るなぁと思いました。ずっと家に一人でいると誰かと遊びたくなる。でも飲み会やパーティーが続くと、一人になりたくなる。どちらかの状態に固定されることには耐えられず、常にどちらかの状態からどちらかの状態へさまよい続ける。


『こんど地球に戻ったら絶対に外へは出ないぞ。二度と宇宙には飛び出さないぞ。ところが、帰ってくると、また出掛けてしまう。恐らくこんなことが死ぬまでつづくんだ。父さんはそれでも努力しているんだ。こんど土曜日に帰ってきたときだって、一生懸命になって、うちに居つづけようとしたんだ』

このお父さんは、宇宙に出ている時間があるからこそ、このお父さんなのだと思います。多分このお父さんから宇宙を取ったら、魂が抜けたように家でボケーっとして、死んだような目でずっと星を眺めているんじゃないかな。しかも、多分、このお母さんは宇宙に行くお父さんだからこそ好きになったような気がしていて。宇宙を飛び回るような人だからこそ、好きになったんじゃないかな」

 

仔月「傍にいてほしいけど、【宇宙に行くお父さんだからこそ好きだ】とすると、束縛もできないし」

 

fee「お父さんの夢を応援して、好きな事をさせてあげている。お父さんも、このお母さんや子供の事を、お父さんなりの愛し方で愛していると思います。お母さんに負担がかかっているなぁとは思いますけど。このお父さんは自分でもどうしょうもできないと思う……」

 

仔月「あぁ~」

 

fee「宇宙が染みついていて、それなしではいられない。それを取っちゃったら何が残るんだろう」

 

仔月「宇宙の事を気にせずにはいられない」

 

fee「宇宙の方がむしろホームで、この家に旅行に来ているのかもしれないですね。宇宙の何がそんなに楽しいのかはよくわからないですけど」

 

仔月「よくわかりませんけど、きっと楽しいんでしょうね」

 

fee「仔月さんは結構お父さんを突き放していますねw」

 

仔月「お父さんには共感できなかったのでw」

 

fee「僕はお父さんにもお母さんにも感情移入できたので、どちら寄りというわけでもないけど、対談の立場上お父さんを擁護してますw
『父さんみたいにならないと約束しておくれ』と、父さんは言った。『大きくなったらロケットマンにだけはならないでくれ』。
自分のわがままで家庭を犠牲にしているのではなく、父さんもこうせずにはいられない。そういう意味で夫婦どちらも不幸だと思います。

だから、お父さんのマリオネットを作って、お母さんの側においてあげればいいんですよ。こんな時のためのマリオネットじゃないですか」

 

仔月「なるほど……ただ、それはそれで怖いような」

 

fee「しかし『万華鏡』の時も思いましたけど、ブラッドベリの宇宙は、キラキラしていますね。氷と岩の塊が空間を浮かんでいるんじゃなくて、ワクワク大冒険の世界みたいな」

 

仔月「『ロケット』もそんな感じでしたよね。星々が煌めいて」

 

fee「僕はそういうのは好きなんだけど、実際の宇宙とは違うフィクション上の宇宙ですね」

 

仔月「ファンタジー的宇宙ではありますよね」

 

fee「1950年代だから許されたのかもしれません。アポロが月に行ったあたりから、もう少し真面目に書かないといけなくなって。タコ型宇宙人とか書けなくなっちゃったんですよ……。僕は昔のSFの方が好きな作品は多いなぁ(笑)」

 

仔月「タコ型宇宙人っていつ頃まで書かれていたのかな?」

 

fee「50年代ぐらいだと思う……。1954年、フレドリック・ブラウンの『火星人ゴーホーム』には愉快な火星人が出てきました。アポロ13号の1963年あたりが分岐点なんじゃないかなぁ。月にウサギがいない事が解っちゃったし」

 

仔月「ww」

 

fee「ダグラス君はこの後ロケットマンになるんでしょうか?」

 

仔月「いやぁ、お母さんからしたら、ダグラス君がロケットマンになったら複雑だと思います」

 

fee「『大丈夫だよ、3か月に1回ぐらいママのところに帰ってくるから!』帰ってきて2日目ぐらいから宇宙を見上げるようになって、4日目には『ごめんねママ。お土産を楽しみにしててね!』。壮絶なバッドエンドですね。ヤバいです。最後は月に落ちて死んで、ママは昼も夜も外に出られなくなる……。

……ママの悲しみを傍で見ているダグラス君が、まさかこの後ロケットマンになる事はないと思い思いますけど……」

 

仔月「ならないでほしいですw」

 

☆全体

 

fee「『刺青の男』ですが、全体としてはどうでした?」

 

仔月「話の幅がかなり広かったですね。ホラーからファンタジー的なSF、宗教的な話もありますし、ユーモラスなドタバタ話、感動系の話もあって」

 

fee「ブラッドベリは子供を描くのが凄く巧いなと思っています。『草原』、『ゼロアワー』が代表的ですが、子供の残酷さと、小学生の夏休み的なワクワク感。子供特有のいろいろな面。『ロケットマン』のダグラス君も大人になりかけの中学生で」

 

仔月「『ゼロアワー』は大きい子供を仲間外れにしているのが、それっぽいなぁと思いました」

 

fee「『子供たちは芝生の上で、めったやたらにパチンコを打ち、わめき合い、手をつないでぐるぐるまわり、木にのぼり、とめどなく笑っていた』とか凄く好きです。

『とても愉快。わくわくするような楽しさ。喉いっぱいの叫び声。泥だらけで、汗だくのミンクが、家のなかに駆けこんで来た。すごく面白いゲームをするの!』とか。『10歳以上の子供たちは、こんな遊びを軽蔑して、わざとその辺を散歩したり、自分たちだけで、たとえば隠れん坊のような、もっとおとなしい遊びをやっている』とか。

『おとなたちは元気いっぱいの子供たちのそばを通りながら、そのエネルギーをねたんだり、うらやんだりするのだった』

良い意味でブラッドベリは少年の心を忘れていない。

後は人の心理を描くのが巧い。僕がブラッドベリを好きなのはそういうところですけど、『ロケット』とか『今夜限り世界が』は優しい世界ですよね。『草原』や『ロケットマン』、『日付のない夜と朝』は狂気に陥った話。共通するのは、人間の心を描いているということ」

 

仔月「『長雨』もそうですね」

 

fee「人間の心を深く描ける人は、怖い話も書けるし、優しい話も書ける」

 

仔月「だから、幅広い作品が書けるんですね」

 

fee「人間の心の方に比重が大きいため、『万華鏡』などもホリスの人生の話が主で、宇宙空間の整合性のような側面については、あまり興味関心がないんじゃないかとは思います」

 

仔月「焦点がはっきりしていますね。どこにフォーカスが当てられているのか。読みやすくてぼくは好きですけど」

 

fee「ブラッドベリは、大体こういう感じの話が多いです。そういう意味でも、この『刺青の男』は、ブラッドベリらしさが味わえる良い短編集だと思います」

点数表につきましてはこちらをご覧ください。


☆『町』


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fee「2万年前、タオラン惑星は滅びました。地球人と戦争をして、滅ぼされてしまったんです。タオラン惑星を滅ぼした地球人は、伝染病を恐れてどこかへと行ってしまいました。時代が変わって、2万年後に地球人が再びタオラン惑星の滅びた町を発見します」

 

仔月「町自体が、一種の生物のように、地球人がやってきたことを察知します。で、その地球人を一人ずつ……(言葉に詰まる)」

 

fee「一人ずつ、片づけた?」

 

仔月「そうそう、片づけるんですけど、ただ殺すのではなく、地球人を作り替えるんですね。町自体が地球人を生体機械に改造する。そして地球に送り返して、地球を滅ぼさせる事で復讐を完遂する話です」

 

fee「これは、洗脳ではなく改造されたんでしたっけ?」

 

仔月「改造ですね、多分」

 

fee「結構怖い作品ですよね。感想は……地球人は本当に迷惑ですね。なぜタオラン惑星に戦いを挑んだのか……。戦いを挑んで勝っておいて、疫病でタオラン星人を皆殺しにして他の惑星に行くなんて、サイテーですね」

 

仔月「はははww」

 

fee「別の機会にも言ったんですが、やはりブラッドベリが書く、地球が他惑星に侵略する描写は、中世ヨーロッパ人がアステカインカを侵略するイメージで書いている気がします」

 

仔月「あぁ~、確かにそうかもしれないですね」

 

fee「コルテスとかピサロとか、あの辺りのイメージで。僕がそう思い込んで読んでいるだけかもしれませんが……。ブラッドベリ作品を何冊も読んでいるため、『ブラッドベリだからきっと……』という」

 

仔月「パターンが見えてしまっているため、そのパターンに当てはめて読んでしまう癖がついている?」

 

fee「そうそうそうそう。ブラッドベリはパターンが見えやすいので。そういう読み方は、逆につまらないとは思うんです。作家研究のためじゃなく娯楽とて読みたいと思っているので……」

 

仔月「いったんそういうパターンを見つけてしまうと、その考えを振り払うのは難しいかもしれませんね」

 

fee「ですねぇ。異色作品ならともかく、同じ読み方で読めちゃう作品だとね……。古代遺跡みたいな町はたまにRPGなどに出てきますが、そんな町が動き出したら怖いですね」

 

仔月「実際に動くとなると怖いです。隊長が町の通りを歩いていると、急に足元に穴が開いて落とされて、首元を切られて、バラバラにされて、機械で人間の形に再構成されて……改めて考えると、とても怖いです」

 

fee「凄い目に遭いましたね……。エロゲなら、女の子が街を歩いていても、エロい罠に引っかかるぐらいで済むのに……ってそんな事しか考えられないのか!」

 

仔月「www」

 ☆『マリオネット株式会社』

 

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fee「2人の男性主人公が登場します。ブローリングさんとスミスさん。2人とも奥さんがいて」

 

仔月「それぞれ奥さんに悩まされています」

 

fee「スミスさんは奥さんにめちゃくちゃ愛されています。会社に十回も二十回も用のない電話をかけてきて、毎晩2時間も膝の上で抱っこされたがっていて……これはさすがに愛されすぎw」

 

仔月「はい(苦笑)。ブローリングさんの方は、リオに行きたいのに、結婚しているから行けなくて。こちらはどちらかというと自由がない事を悩んでいます」

 

fee「スミスさんの方も自由はないですけどw」

 

仔月「まぁそうですねw」

 

fee「そこで、複製ロボットの製作会社(マリオネット株式会社)に商品を頼みました。まず、ブローリングがそれを使います。『マリオネットに家にいてもらって、その間にリオに旅行してくるぜ!』という」

 

仔月「スミスも、その話に乗りたいということでブローリングから詳細を聞き、マリオネットを買おうと家に帰って貯金を確認すると、不自然に貯金が減っている。奥さんの顔を見ると、なんとマリオネットに変わっていた! スミスさんを愛しすぎていたはずの奥さんが、先にマリオネットを買っていた、というオチです。

次にブローリングの方に話が移ります。こちらは、最終的にマリオネットに成り代わられて終わりです」

 

fee「マリオネットに、『俺ばっかり貧乏くじを引かされてズルいや! 俺が奥さんと一緒にリオに行ってくる!お前は留守番してろ!』と言われて、ブローリングが道具箱に入れられて終わり、です。スミスのストーリーとブローリングのストーリーに分かれますが、どちらも面白い」

 

仔月「ですね」

 

fee「僕は星新一の作品を読んでいる気分になりました」

 

仔月「確かに星新一の作品ってこんな感じです」

 

fee「うんw だからこの作品が好きな人は星新一も好きそうだし、逆もまた然りで。

まず奥さんに愛されすぎているスミスさんから話しますけど……奥さんが先にマリオネットを買った理由はなぜでしょう? スミスは奥さんに愛されていなかったんでしょうか? スミスさんは愛されすぎる事を嫌がっていたのに」

 

仔月「もっと早い段階で、奥さんとマリオネットが入れ替わっていた、とか?」

 

fee「前から奥さんに愛されすぎていたのが、いっそうひどくなったのが先月頃という描写なので、入れ替わったのは早くても先月だと思います。……ずっと前からマリオネットだったけど、マリオネットがスミスさんに恋をしたのが先月頃だったという推理もできますが……。

元々、構ってちゃんをしていた奥さんが先月頃から更に激しくなった。ということは、成り代わる前の元の奥さんもスミスさんに激しい愛をぶつけていたはずなので、マリオネットを買う動機は見えてきません」

 

仔月「大昔からという事はないでしょうね。奥さんが大昔からマリオネットに成り代わっていたなら、貯金の減りにも、もう少し早く気づくでしょうし」

 

fee「スミスが冷たいから、悲しくなってどこかに行っちゃったんでしょうか?」

 

仔月「ありそうな線としてはそんな感じかな」

 

fee「ネティー(スミス夫人)がスミスの冷たさに失望して失踪したなら、そもそもマリオネットを買う意味がないと思うんですが……。むしろ、『私がいなくなって寂しいでしょ! 寂しがりなさいよ! 今まで私を寂しがらせてきたんだから!』ということで。

ネティーはどこに行っちゃったんでしょう? こんなにスミスさんに熱烈に愛を捧げていたのに、実は二股をかけていて、遂に不倫相手の方に逃げちゃったんでしょうか?」

 

仔月「だとしたらすさまじいです」

 

fee「ネティーの自由時間は、求愛行動だけで終わっちゃいそうですよね。愛されるのは良いけど、ここまで愛されるのはストレスだなぁ」

 

仔月「大変そう……」

 

fee「愛が重すぎますよw 会社に20回も用がない電話をかけてきて、甘ったるいお喋りをされたら勘弁してほしいw 仕事にならないですよw 絶対職場では笑われていますよね。しかもマリオネットに成り代わっているし」

 

仔月「LINEで、5分に1回返信を欲しがる人みたいな。不安で仕方ないんですかね」

 

fee「まぁねぇ。僕も結構せっかちな人なので、相手の反応が遅いと不安になりますけど……度が過ぎている人っていますよね」

 

仔月「あぁ~」

 

fee「僕は好きな人だと、できれば毎日連絡ほしいです。なんでもいいから。最低でも3日に1回は欲しい。でも5分に1回はないなぁ、さすがに」

 

仔月「5分に1回は凄いです……」

 

fee「2時間ぶりにケータイを見たら、『ねぇねぇ今ひま?』『ねぇ何で返事しないの?』『ケータイ見てないの?』『なんで相手してくれないの?』『もういいよわかったよ!寝るよ!』『ねぇ怒っちゃったの?』『まだ私は起きているよ、気づいたら返事してね』『返事くれない……もう別れちゃうの? 嫌だよ、別れたくないよ……』『ごめんね、何でもするから許して! ごめんね、ごめんね』なんてメールが20通ぐらい来ていたり……?」

 

仔月「そんな恋人がいたら、何も手につきませんねww」

 

fee「大人になるとさすがにそこまで暇人はいないのではないか……もう少し分別は持ってほしいですけどね。仔月さんがそんな人に愛されたらどうしますか?」

 

仔月「いやぁ~~~。あまり他人に強く言えないタイプなので、多分疲れるなぁ~と思いつつ許容するんじゃないんすかね~」

 

fee「疲れるな~と思いつつ許容して~」

 

仔月「我慢できるかどうかはわからないんですけど……」

 

fee「数か月後に我慢できなくなって別れますよ、きっとw これは不安もあるんですけど、自分がワガママを言って、どれぐらいのワガママなら許してもらえるのかを測ったりしているんだと思います」

 

仔月「あ~~、それはちょっと自分には想像がつかなかったですね。不安は想像がついたんですが、そういう計算高さは想像していませんでした」

 

fee「この作品に絡めると、毎晩2時間膝の上に抱っこされたがるという話があります。毎晩2時間抱っこしてくれるというのは、ワガママだという事はネティーも知っていて」

 

仔月「はい」

 

fee「その2時間を、自分のためにやってくれているんだから、私の事を愛しているんだと考えるんです。相手に犠牲を強いて、そんなにまで私の事を愛してくれているんだ、というのを常に確認して、そうじゃないと不安になる」

 

仔月「解る範囲で好意を示してもらわないと、気持ちを確かめられない?」

 

fee「毎晩2時間というのもちゃんとわかっていて。最近1時間しか抱っこしてくれなくなった、先月から半分に減った、きっと愛も半分に減ったのね……って」

 

仔月「はははww」

 

fee「『昔は2時間も抱っこしてくれたのに、今のあなたは15分ね。あまり愛してくれなくなっちゃったのね』と勝手に思って『もういいわ別れましょう』って言う。それで引き留めてほしい。

『そんな事ないよ、愛してるよ』って言って2時間抱っこしてあげれば機嫌が直る。そういうパターンだと思います」

 

仔月「いやぁ、凄いですね……」

 

fee「これは費やしてくれる時間だったり、プレゼントの金額だったり、ワガママなお願いだったり、色々ありますけど、総じて、恋人にするのはやめておいた方が良いタイプの人だと思います」

 

仔月「自分は譲歩しちゃうタイプなんで……」

 

fee「譲歩しきれるならいいですよ。最後まで」

 

仔月「あぁ~~」

 

fee「そこなんですよ。譲歩してもストレスを感じないなら。他人に合わせる事ができるのは美徳ですからね。でも辛いな~って思いながらだと、長くは続かない」

 

仔月「ですよね」

 

fee「付き合って、相手と1回Hすればもう別れよう。1回Hできるまでは我慢しよう!とかそういうのなら良いかもしれませんけどね。この人と末永く付き合いたいな、と思うなら、やめといた方が良いですね。そういう人は」

 

仔月「なるほど……連絡の頻度は気になりますかね」

 

fee「ケータイを皆が持っているこのご時世では相当大事な問題だと思います。連絡が1週間に1回で良い人もいれば、5分に1回聞きたい人もいるし、人によってそれぞれなので。妥協できる範囲ですり合わせるしかないです。

『1カ月間恋人の声を聞かなくても、きっと僕たちの心は繋がっているよ』みたいな雑な連絡をする人と、5分に1回声を聞きたい人とじゃ、やっぱり付き合えないと思いますね」

 

仔月「合わせるのも難しいですよね」

 

fee「こんな事を言うと怒る人もいるでしょうけど、男性も女性も複数の恋人を作ればいいと思います」

 

仔月「www」

 

fee「1日に1回声を聞きたい人と、3日に1回声を聞きたい人だったら、1日1回の人が3人ぐらい恋人を作って、毎日別の恋人の声を聞いていればいいんじゃないですか?」

 

仔月「負担を分散するってことですかww」

 

fee「僕も寂しがり屋な方ですけど、ネティーレベルを相手にするのは僕でもきついですね。ずっとケータイを見てなきゃいけないじゃん」

 

仔月「ですよね」

 

 

fee「ごめんなさい、スミスさんの話で盛り上がっちゃいましたけど、もう1人ブローリングさんという主人公もいたんでした」

 

仔月「ですねw」

 

fee「こちらの話も怖い。マリオネット株式会社はよく潰れませんね。こんなの訴訟の嵐でしょ」

 

仔月「今までのオーナーも全員ブローリングさんみたいな目に遭って、誰も訴えない。だから外部の人は誰も気づかないという可能性も……」

 

fee「怖っ! じゃあマリオネット株式会社の社員も、全員マリオネット? 怖いですねぇ」

 

仔月「人間に成り代わったロボットが社会に進出していく」

 

fee「『草原』にもロボットが人を殺す話がありました」

 

仔月「まさにそうですね」

 

fee「ロボットが自我を持ちすぎていませんか? ブローリング夫人を愛しちゃっていますし」

 

仔月「マリオネット株式会社がそういう風に設計したんでしょうか?」

 

fee「ブローリングのマリオネットだけが故障したのか、そういう風に設計したのかは解りませんが……『ぼくは、奥さんが、とても好きになってきた』とマリオネットが言っていますからね。自分が嫌な事をやらせるためにマリオネットを買ったのに、『俺ばかり貧乏くじでズルい!』って言われたらね」

 

仔月「本来の用途に使えない……」

 

fee「マリオネットの気持ちもわかりますけどね。でも嫌な事をやってもらうために買ったのに……」

 

仔月「道具としては役に立たないw」

 

fee「そうですね。そんなふうに設計しなくても良かったんじゃないの……? そういえばブローリング夫人ですけど、なぜ夫をリオに行かせないようにしていたんでしょう?」

 

仔月「えっと……書かれていましたっけ?」

 

fee「書かれてなかった気がします」

 

仔月「『じぶんで着てるものを引き裂いて、髪をざんばらにして、うんといわなきゃ警察に訴えるって脅した』って話はありますけど……理由については書いてないかな」

 

fee「こちらの奥さんも実はネティー系のキャラなんですか?」

 

仔月「っぽいですw」

 

fee「結局似たような奥さんをもらっちゃったのか。愛が冷めているなら、むしろ『こっちはこっちで遊んでるから、お前は勝手にリオでも行ってろ!』みたいな反応になるでしょ?」

 

仔月「ブローリング夫人も構ってほしかったんでしょうね」

 

fee「最後の方でキスをされた際、『こんなこと、もうなん年もしてくれなかったのに……』って台詞があります……。これはどう読んでも喜んでいます」

 

仔月「ですね」

 

fee「ブローリング夫人もブローリングの事が大好きなのか。一人でリオに行ったら、現地でハメ外しちゃうかもしれないし。ネティーと一緒ですね。『他の女と会っているんじゃないの!?』って疑心暗鬼になるから、ブローリングは飲みにも行けない。リオに一人で行くなんて言ったら、『向こうで何人愛人作ってくるのかしら!』って。こちらも、愛しすぎちゃってる妻なのか」

 

仔月「はい」

 

fee「リオに行くのも、奥さんと二人で旅行をすれば、奥さんはついてきたはず」

 

仔月「丸く収まったでしょうね」

 

fee「なぜか1人で行きたがってるんで。なぜ1人で行きたがってるんでしたっけ。やはり、羽目を外したかったんでしょうか?」

 

仔月「ですかね……。『きみは奥さんを愛しちゃいなかったんだ。きみだって、そのことは、はっきりいったんだろ?』『そういえば、そのことだけは、自信もっていいきれたね』とは書いてあります」

 

fee「奥さんが好きじゃないから、たまに奥さんと離れて羽目を外したかった?」

 

仔月「そうでしょうね」

 

fee「じゃあ、奥さんと一緒に旅行に行くわけにはいかないのか」

 

仔月「はいw」

 

fee「自分の事を愛していないブローリングさんを相手に、暴れて無理やり結婚したんですね、このブローリング夫人は……」

 

仔月「ですね」

 

fee「こえー……ネティとほとんど一緒じゃないですか。ヤンデレですよ!」

 

仔月「(爆笑)」

 

fee「ネティと違って、具体的に描かれていないからわからないけど、ネティ以上にヤバそうな感じがする……」

 

仔月「最後にデレているのでヤンデレなのかな?」

 

fee「元々デレてたんだけど、ブローリングがそっけなかったから暴れてたんですよ。好きじゃなきゃ暴れもしません。暴れたってそっけないのが変わるわけもないんですけど、それでも好きだったんですね……」

 

仔月「ですね」

 

fee「『こんなこと、もうなん年もしてくれなかったのに……』ってことは、何年か前にはキスをしてあげていたのかな?」

 

仔月「キスしたこと自体は事実なんでしょうね。好きだからやったかは別にして」

 

fee「まぁ、結婚する前に、愛していなかったけど恋ぐらいはしていたのかも」

 

仔月「……結婚するとなるとまた違うでしょうし」

 

fee「さっき言った下世話な例じゃないですけど、『この女とHしたいぜウへへ』ぐらい思って、甘―いキスとかしてHして楽しい気分だったのが、奥さんが執念深くついてきて、『結婚してくれなきゃ自殺するわよ!』と言われてズルズル結婚してしまったのでは?」

 

仔月「ありそうですね」

 

fee「というふうに読めば、『何年か前にキスをしてくれた』という記述と、『愛してはいなかった』という記述の整合性は取れます。……ブローリングがどんな手練手管で、ブローリング夫人の身体をいただくために甘いキスをしたのかは知りませんけど、ただ付き合うのと、結婚してずっと一緒にいるのは別物なので、そんな暴れられても困ると思うんですけど……」

 

仔月「うーん……」

 

fee「まぁ、ブローリングが不誠実だ!と思う読者もいると思います。結婚するほどの気分ではない人に、ブローリングはキスをしてたんでしょ?」

 

仔月「双方の合意のもとでならいいとは思いますけど」

 

fee「ブローリング夫人が早合点して、『この人私に夢中だし、結婚してくれるんじゃない?』と思ってて、ブローリングの方は『とりあえずかわいいからHして、飽きたら捨てよっと』みたいな。

結婚して10年ということは、まだ25歳くらいの頃でしょうし。あまり考えずに口説いていたら、夫人はガチに受け止めて結婚するものだと思ってたのに、拒否されたから大暴れした。それで仕方なく結婚した、みたいな感じかな?」

 

仔月「はいw ブローリング夫人が彼を脅迫していて、結婚しなきゃ警察沙汰にするぞと言っているんですよね」

 

fee「そんなことまでして結婚してもらって、なにかいいことあるのかな? まぁいいですけど」

 

仔月「ブローリングはよく10年も我慢していましたね」

 

fee「ヤンデレを軽々しく、雑に口説いた結果がこれですね。やっぱり口説く相手も少し考えないといけないですよ。お互いの要求がマッチしていないと」

 

仔月「ミスマッチはお互いにとって不幸だなぁと」

 

fee「遊び半分で、純情でウブで真面目な夫人を弄んだのか、夫人が勝手に早合点したのかがわからないんですよね」

 

仔月「もしブローリングが弄んだとするなら、その点については良くないと思うんですけど。夫人の方は夫人の方で、脅迫するのはどうなのかなとも思います。ブローリングが騙した場合は、どっちもどっちかな」

 

fee「わかりました。僕は7:3ぐらいで夫人の方が悪いと思いますw どういう弄び方をしたかにもよりますが。結婚や将来の新生活を散々期待させておいて、突然捨てたとかならブローリングの肩は持てませんけど、その場合でも5:5かな。
別の可能性として、夫人が『50年後も一緒にこの桜を見られるといいわね』みたいな話を振ったら、ブローリングが適当な感じで『そうだねー』と返事をして。『この人、50年後も一緒にいてくれるんだ! 私と結婚する気なんだ! きゃっきゃ!』みたいな思い込みを夫人が勝手にした可能性もあります」

 

仔月「その場合は夫人の方が悪いですね。真に受けやすい夫人の性質に、ブローリングが意図的に付け込んで、弄ぶだけ弄んだならどっちもどっちだと思います。

ブローリングにその気がなかったにも関わらず、夫人が勝手に勘違いして自分の身を盾にしたなら、それはあまりにもヤバいですね」

 

fee「この小説から読み取れることは、『かつてブローリングが、夫人にキスをしたことがある』というのと、『ブローリングは結婚前から、夫人を愛してはいない』というのと、『夫人は、彼を脅迫して無理やり結婚した』という事だけで、それ以外は全部僕らの推測ですから……。

まぁ、こんなドロドロな話は楽しい話題ではないかもしれませんが、人によって意見が変わるところだと思うので、突っ込んだ話を振ってみましたw」

 

 

 

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