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☆ 『今夜限り世界が

 

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fee「人類皆が同じ夢を見ています。今夜限り世界がなくなってしまう。終わってしまう。そういうお話です」

 

仔月「すごく短い物語なんですが、とても好きな表現があって。

夫は、妻がベッドから跳び起き、台所へ行く音を聞いていた。妻はすぐ戻って来た。『水道の蛇口がちゃんとしまっていなかったの』、と妻は言った。なぜか突然おかしくなって、夫は笑い出した。妻も、自分のしたことがこっけいだと気づいて、夫といっしょになって笑った

もうすぐ世界がなくなるならば、何をやっても意味がない。蛇口を締めたのは、未来があるからやる行為じゃないですか。世界が終わってしまうというのに、普段通りの行動をとっているところが、いいなぁと思って」

 

fee「そもそも、今夜限り世界がなくなってしまうかどうか、というのもちょっとよくわからないですけど。まぁ、なくなってしまうとして、割と静かな感じの話ですね。世界の終わりを静かに迎える」

 

仔月「はい」

 

fee「誰かが大暴れするとか。どうせ世界がなくなっちゃうなら銃を乱射してやる!みたいな話でもなく、穏やかに世界の終わりを迎えます。僕もこういう優しい終焉の話は好きですね。仔月さんがこないだプレイなさっていた、『そして明日の世界より』辺りにも近くないですか?」

 

仔月「そうですね。まさにそんな感じです」

 

fee「前回も触れた、ネビル・シュートの『渚にて』もそういう話です。まぁ、実際のところ今夜限りって言われたら、じたばたしないような気もします。どうでしょう? 1か月後に世界が終わると言われたら暴れちゃうかもしれないけど、今日でって言われたら『あ、もういいや』って感じになりそうな」

 

仔月「『そして明日の世界より』は世界終末まで3か月なんです。3か月って凄く長いなと思って。すぐには来ないけど、確実に近づいてくるのはしんどいなと。今夜限りというのはそれに比べれば楽かな、と思いました」

 

fee「3か月あれば、そこそこの事はできます。死ぬ前に世界一周旅行するとか。死ぬ前に何かできそうだ、と思うと逆に焦りそう。ただ絶望して過ごすには、長い……」

 

仔月「長いですよねw」

 

fee「卒業前の4日間の話を描いた、『クレッシェンド』という大昔のエロゲがあります。在学中に思い残した事を卒業前最後の4日間でやる、という。卒業してバラバラになるまでの4日間。実際には違うけど、狭い意味では卒業も、1つの世界の終わりだと思います」

 

仔月「区切り、ではありますね」

 

fee「今回の『今夜限り世界が』は、文字どおり今夜で世界が終わる。……ちなみに、本当に世界は終わるんですか?」

 

仔月「終わるのかなと思って読みました」

 

fee「ですか。僕は終わらないのかなと思って読みましたw 『変な夢見たよー』『俺も俺も』みたいな日常の光景として(笑)」

 

仔月「ぼくは穏やかな世界の終焉と読みました」

 

fee「もちろん、穏やかな世界の終焉だと思って読むのが正解だと思います。ただ、基本的にこの作品では、『幸せな1日の光景』が描かれている。1日が終わる、というのもある種1つの世界の終わりでもあります。この作品はSFというより、ファンタジーかな?」

 

仔月「そうですね」

 

fee「世界が終わるメカニズムや、なぜ皆が同じ夢を見るのかなどを、難しい理屈で説明づけたらSFになると思いますが……」

 

仔月「具体的な背景が、論理的に詰められてはいないですよね」

 

fee「それが悪い、というわけではなく。穏やかで甘くて、少し切ない、良い作品だと思いました」

 

 

☆『その男』

 

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fee「この作品は宗教の話なんですが、宗教の話は……僕は語りづらい、です」

 

仔月「はい」

 

fee「ハート隊長とマーティン副官が登場人物。マーティンが主人公です。新しい惑星に来たんですけど、誰も歓迎してくれない。何故かというと、昨日もっとすごい人が来たという事なんですが……。そのすごい人というのは、キリスト的な人ですか?」

 

仔月「どの宗教かは明示されていませんけど、そんな感じだと思います」

 

fee「救世主的な人が来たという事で大騒ぎになっている。隊長は、そのキリストを求めて追いかけて行ってしまいますが、マーティンはこの惑星に残ります。

きのどくな人です』。市長は言った。『次から次へと惑星をめぐりめぐって、あの方を探し求めるでしょう。そして、いつでも、そう、いつでも一時間、三十分、十分、一分と、すこしずつあの方におくれるのです。しまいにその差は数秒にまでちぢまるでしょう。惑星を三百も遍歴し、御自分が七十歳か八十歳になる頃には、その差は一秒の何十分の一、何千分の一にまでちぢまるかもしれない。しかも、遍歴はつづくのです。ここに、この惑星に、この町に、目あてのものを残して行ったとも知らずに』

という事で。結局、距離は縮まっても、神様には追いつけない。でも、【追い求めていたものは側にあったよ】じゃないけれど、惑星から出て行ったと思ったら、残っていた。実際に残っていたんじゃなくて、多分、その痕跡・恩恵を残して行った、みたいな話になるんでしょうか?」

 

仔月「だと思います。灯台下暗しというか、隊長はその事に気づかなくて、旅を続けることになってしまう」

 

fee「そうですよね。これは……キリスト……って言っちゃっていいのかな? 僕、これはもうキリストにしか読めなくて」

 

仔月「ぼくもキリストかなと思います。宗教と科学の対立の話。科学の側では、精神的な安寧を手に入れる事はできないけれど、宗教の側では得ることができる、という」

 

fee「物語テーマはそれで良いと思いますけど、今言いたいのはそこじゃなくて。とりあえずイスラム教アラーとか、ユダヤ教ヤハウェにはどう考えても見えないなという話がしたい(苦笑)。日本の天照大神にも明らかに見えないです。この神様像はキリストだろうなぁって。ちなみに僕は無宗教です」

 

仔月「ぼくもそうです」

 

fee「この作品の神様というのは、実体はないんですか? あるんですか?」

 

仔月「多分、ないと思います。各々によって見える形が異なるという描写があります。たどり着き方もそれぞれによって異なると書かれています。実体があるものなら、幻覚を見ていない限りは見える形は同じになると思うので、観念的なモノを指しているのだと思いました」

 

fee「ブラッドベリワールドだと、『火星の人』(『火星年代記』所収)に、相手が望む姿で現れる、精神感応者が出てきます。後、ここに触れるのは少し怖いんですが、この作品のタイトルは『その男』ですよね。神様にもやはり男女はあるんですか? いや、あるんでしょうけど、実体がないんだとしたらなぜ『その女』ではなく、『その男』なのでしょう? 観念的な存在ならもっと中性的な感じが……あんまり深堀すると手に負えないレベルの神学話になりそうですけど。いろんな姿に見えるのはわかったけど、女に見えた人はいないんでしょうか?」

 

仔月「あぁ~、どうだったかな?」

 

fee「病人を治したり、貧乏人を慰めたり、偽善や汚職と戦ったり、人の中に入って道を説いたり……1日で随分頑張りましたね」

 

仔月「はははw」

 

fee「あと、本当に『その男』が来たのかどうか。宇宙人が来るたびに口裏を合わせてこういう話をしている可能性もありますよね。その辺も、ちょっとよくわからない」

 

仔月「どうなんですかね……」

 

fee「一方で、実体があるのなら追いつけると思うんです」

 

仔月「実体があるなら、向こうの方がスピードが速くなければ捕まえられると思います」

 

fee「しかも、時間は少しずつ縮まっているみたいですし。追いつけたとしても、この隊長には安らぎが訪れそうにないけど」

 

仔月「はははw 信仰心を持たない者には見えない、信じない者は救われない、みたいな話でしょうか」

 

fee「信仰心を持たない人を助けて、信仰心に目覚めさせる事はできないのかな? 『自分を信じている奴だけ助けてやるよ』的な、そんな心の狭い事を言わないでほしいですけど……」

 

fee「ところで、隊長はバートンとか、アシュレーといったキャラの事を勝手に敵視していますね」

 

仔月「他の宇宙船の船員でしたっけ?」

 

fee「そうなんですけど。地球人がやりそうな事だ、という台詞がありますが、自分たちのことを言う言い回しにしては奇妙じゃないですか?」

 

仔月「隊長は地球人じゃないのかな?」

 

fee「不明なんですよ。多分地球人だと思うけど、それならそんな言い方をするかなぁ? 僕が海外旅行に行った先で、カメラでパシャパシャやっている人を見たとして、『日本人ならやりそうな事だよ!』って言うかしら?」

 

仔月「隊長の方に、地球人と自分を分ける意識があるように見えますね。もしかしたら別の惑星生まれの可能性もあります」

 

fee「話がズレて申し訳ない。『地球の人間たちが、二十世紀の間語り続けた、あの男』と書かれているので、やはり『その男』=キリストでほぼ確定だと思います。この作品の舞台が26世紀、という可能性もゼロではないとはいえ、ムハンマドがイスラム教を作ったのは7世紀なのでユダヤ教は逆に20世紀以上語り継いでいるはずです。

アメリカ作家全体に言える事ですが、出てくる神様もキリスト教なら、出てくる地域もアメリカ。地球を懐かしむようなシーンでも、出てくるのはミズーリ州とかアイオワ州とか」

 

仔月「『形勢逆転』でもそうでした」

 

fee「この人たち(アメリカ人作家)にとっては、世界の中心はアメリカなんです。だから神様と言ったらキリスト教で間違いあるまい、という。これはアメリカ小説特有の現象じゃないかなぁ」

 

仔月「あっ、そうなんですか」

 

fee「日本人作家が『形勢逆転』を書いたとして、乗組員全員が、東京や大阪や京都出身という事はあまりなさそうな気がしませんか? 火星にやってきた地球人たちが、『俺は奈良の生まれだ』『僕は北海道です』とか言い合っていたらちょっと違和感があるというか。日本人作家が書くと、1~2人ぐらいは日本人が入るにしても、オーストラリア人やアメリカ人、フランス人など、出身地域をばらけさせると思うんです」

 

仔月「バランス感覚として、ですね」

 

fee「アメリカ作家の多くは、*世界が終わる時もアメリカの話しかしません。ブラッドベリもその枠から逃れられていない気がします。アメリカ人読者が読む事を前提にしているとはいえ……。言葉を飾らずに言うと、ちょっと傲慢さを感じる事はあります」

*スティーブン・キング「ザ・スタンド」ロジャー・ゼラズニイ「地獄のハイウェイ」デイビッド・ブリン「ポストマン」、その他もろもろ。

 

 

☆『日付のない夜と朝』

 

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fee「ヒッチコックさんが主人公です。色々面倒くさい人ですね」

 

仔月「www」

 

fee「現在の事しか信じない。記憶を信じない」

 

仔月「自分の認識できる範囲のものしか信じないです」

 

fee「最後、ちょっとおかしくなって、宇宙船から飛び出しちゃう。
もう宇宙船なんてありゃしない。初めから、なかった。人間なんていない。宇宙のどこにもいない。初めから、いなかった。惑星なんてない。星なんてない』『手がない。もう手がない』。最後は『頭がない。なんにもない。空間だけだ。ギャップだけだ
と言って終わります。この『ギャップだけだ』というのは良いですね。何にもなくても、無はある、ギャップはある、という表現が良いなぁと」

 

仔月「ヒッチコックは神経質な人だと思いますが、自分もそういう部分があるので、他人事だとは思えませんでした。もちろん全部は共感できませんが、そういう悩みも解るなという部分もあって」

 

fee「僕も、割と解らないでもない、ぐらいかな。高校生ぐらいの時は、結構こういう事を考えていました。ちょっと哲学的なものにかぶれた感じで」

 

仔月「あぁ~w」

 

fee「初歩哲学書を読んで、感動しちゃった中2病患者みたいな(苦笑)。

世界は5分前に作られた』という有名な思考実験があります。今ある全てのものが、記憶も含めて5分前に用意されたものだとしたら、そうではないと実証する事はできない。こういう思考実験を、全部まともに受け止めた人なんでしょうか?」

 

仔月「『猫撫ディストーション』というゲームで、森の中の木の話が出てきます。森の中で木が倒れた時に、誰もその場にいないとき、音がするかどうかという話です*1」

 

fee「あ、(猫撫は未読だけど)それも哲学書で読んだことがありますわ」

 

仔月「ヒッチコックさんの悩みはまさにそれに類するものなのかなと」

 

fee「やっぱり哲学ですね。誰も知覚・認識していないなら、存在しない。誰かが見るから存在する。みんなが大好きなシュレディンガーの猫とか」

 

仔月「ふふふふww」

 

fee「ヒッチコックさんの悩みも解るなぁという読者と、なんだこのキチガイは?という読者と、どっちかぐらいしか感想が出ない気はします。こういう問題を全然考えた事がない人は、この作品を読んでも意味が解らないと思うんですよ。面倒くさい奴だな、で本を閉じちゃうだけで」

 

仔月「ははははw」

 

fee「悩んだことがある僕ですら、面倒くさい奴だなとは思いますw」

 

仔月「それは否定しづらいですねw」

 

fee「内心そう考えているだけなら構わないですし、雑談で話すのも大丈夫ですが、超真剣にこういう事を言われたら、どう接していいのかわからないです」

 

仔月「本人は真剣に悩んでいるでしょうけど、その悩みを解消する事が非常に難しそうだなぁ……」

 

fee「そもそも現在の事しか信じないって言われたら、未来への約束なんてできないです」

 

仔月「そうですねw」

 

fee「過去の記憶は信じない事になっているので」

 

仔月「そもそも、クレメンズという人物を一貫して認識する事もできない気がするんですが……ヒッチコックは一貫性に欠けていると思います」

 

fee「まぁ、一貫性には欠けてますね……。中2病ですから。自分に都合の良い所だけ取り入れているんですよ。目の前によくわからん生きもの……生きものという概念すらないのかな」

 

仔月「過去がないとしたらそうなりますね」

 

fee「知識や記憶を全部疑えという事ですから。目の前に……表現できない! どう表現して良いのかわからないw 肉の塊がある、と言おうとしたけど、肉とか塊という表現すらできない……。そもそも言語自体が知識・記憶・概念と結びついているから、喋る事すらできません……」

 

仔月「そうですよね。冷静に考えてみると、ヒッチコックさんはとんでもない事考えてるなw」

 

fee「言語の檻から離れて、世界を在りのままに見ようという考えは、仏教とかにある(はずな)んです。パソコンを見ている、じゃなくて、黒い四角いものを見ている。人間が作り出した概念が、人間の在り方を縛るという考え方がありまして。そういうものから解放されるためには、既存の概念や言語をなるべく解体する。人間が作り出した意味・価値・概念が、人間自身を縛って、人の心に不満・不幸を植え付ける。だから、それから自由になるためには、まず世界を在りのままに見る。

呼吸をしているじゃなくて、お腹が膨らんでいく。食事しているじゃなくて、食べ物を中に入れている。……この辺は生兵法なので、知識がある方に怒られそうで怖いのですが……」

 

仔月「『猫撫ディストーション Exodus』というゲームでも、言語の制約から外れるためにはどうすれば良いかという問いがあって、言語を捨てればいいじゃないかというルートがあるんです。最終的に動物になっちゃうという」

 

fee「『猫撫』のライターって、僕と同じような本を読んで育ったんですかね……。その手の話は僕自身は大好きなので、そのゲームも少し気になってきましたw

 

 *1 数年前にプレイしたので、もしかすると、自身の記憶違いかもしれません……

☆『コンクリートミキサー』

 

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fee「この作品は、低評価しすぎているかも。読んでいる時に、僕自身が猛烈に疲れていたんです」

 

仔月「はははw」

 

fee「頭の中に文章が入ってこなかった。文章のせいなのか、体調のせいなのかはわかりませんが……。

あらすじ行きます。主人公は、火星人のエティルさん。皆からバカにされていた彼が、地球に侵略に向かいます。ところが、地球からはやけに歓迎されて、よくわからないまま骨抜きにされて、エティルさんは最後、交通事故で死んでしまいます」

 

仔月「悪い話だとは思いませんが、乗り切れなかった部分はあります。文明批判として読みました」

 

fee「なるほど……。僕は文明批判だとは読んでいないですね……。火星人は想像力がないので、物理的に侵略する事しか考えていなかったけれど、地球側は文化的な侵略で、火星人を取り込んでしまったというふうに読みました」

 

仔月「なるほど!」

 

fee「アメリカが日本を物理的に侵略するのではなくて、アメリカ資本の会社がたくさんやってきて、ハンバーガーやケンタッキーだらけになって、ミニ・アメリカみたいな感じにしてしまう。洋楽しか歌われなくて、日本古来の音楽がなくなる、そういう話かなと」

 

仔月「確かに、そうですね。言われてみて、なるほどと思いました」

 

fee「どもです。テーマ的には結構好きですけど、ストーリーとして考えるとエティルさんが何をしたかったのかがよくわからなかったです。まずエティルさんって、何で戦争に行きたくないんですか?」

 

仔月「火星が勝てそうにないから。地球人は、フィクションで『火星人の侵略モノ』を読んでいて、そういう想像力を備えている。だから侵略への対抗策も用意してくるだろうし、自分は参加したくないというスタンスだったと思います」

 

fee「勝てそうなら行きたかったの? 勝てそうにないから行きたくなかった?」

 

仔月「あ~」

 

fee「エティルさんは色々本を持っていて、楽しんで読んでいると思ったんです。だとしたら『地球文化が好き』という精神的土壌を持っていそうなものですが……」

 

仔月「はい」

 

fee「でも、後半を読むと、そうでもない。地球の文化に抵抗しようとしています」

 

仔月「そうですね」

 

fee「ってことは、地球が好きなわけでもなくて、単に勝てそうにないから行きたくないだけ。いろんなものを読んでいたのも、地球文化が好きなわけじゃなくて、敵情視察として、敵の文化を集めていただけでしょうか。

地球が好きだから戦争に行きたくないとか、殺し合いは良くないとか、そういった博愛的な、他者共感的な人だったら、もう少し身を入れて読めたかもしれません。けど、これだと、エティルさん自身が、想像力のない火星人だったという事になりませんか?」

 

仔月「はははw」

 

fee「文化として楽しめず、研究のためにしか読めなかった。そう考えると、後半、狼狽して地球文化に抵抗するのも頷けるかな……」

 

仔月「はい」

 

fee「地球文化が好きな人なら、むしろ自分から進んで地球に同化しちゃうと思います。『地球最高、やっぱ火星なんてクソだよ!』的な。この作品でも、焚書が火星で起こっていますが、文明批判というのはそういう意味ですか?」

 

仔月「いえ。地球の文化は資本主義社会を想定していると思います。外部のエティルさんが、骨抜きになって死んでしまう過程を描くことで、そういう資本主義社会への批判をしているのかなって」

 

fee「あ、資本主義への批判ですか? 火星の焚書への批判ではなくて」

 

仔月「そうですね」

 

fee「そっか。焚書なんてするから、地球に負けちまうんだよという方向で僕は読みました。現実の地球で焚書とか言論統制とか、そうしたものに敏感になっていたブラッドベリなので。『焚書(言論統制)なんてしていると想像力も足りなくなってダメになる』と、焚書をした火星への批判として僕は読んだんですが、仔月さんはそうではなくて、【焚書はしていないけど、無邪気に人を殺してしまう資本主義への批判】として読んだ、ということかな?

 

仔月「feeさんの読みも全然アリだと思います」

 

fee「まぁ、資本主義は文化侵略をしますからね……。特にアメリカのような大国では、戦争で死ぬ人間よりも、交通事故で死ぬ人間の方が多そうです。銃を乱射して何人も殺すと大ニュースになりますけど、毎日どこかで車が人をはねている」

 

仔月「そうですね」

fee「色々な解釈が成り立つという意味で、やはり悪い作品ではないなと感じました。読んでいる時はあまり楽しめませんでしたが……」

 

☆『長雨』

 

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fee「珍しく金星が舞台です」

 

仔月「火星じゃないんですねw」

 

fee「金星ではずっと雨が降っています。オアシスみたいな、太陽ドームというものがあって、それに向かってずっと歩き続けていくんですが、蜃気楼のようになかなかたどり着けない」

 

仔月「隊長以外は全員脱落しました」

 

fee「最後は太陽ドームにたどり着いて」

 

仔月「ぼく、最後の場面がわからなかったんですよね。本当にたどり着けたのか」

 

fee「幻という事ですか?」

 

仔月「はいww」

 

fee「仔月さん解釈だと完全にバッドエンドですね。えーと、太陽ドームらしきものに隊長がたどり着いて……」

 

仔月「そこで、幸せな幻を見たのかなーって」

 

fee「仔月さん説をとるなら、隊長はそのまま亡くなった?」

 

仔月「そうですねw」

 

fee「僕はハッピーエンドで、無事太陽ドームにたどりつき、良い気分になって、あぁ~ひどい目に遭ったわ。と読みましたけど、

バッドエンド説もとれるっちゃ、とれますよね。生き残ったのは隊長一人だし」

 

仔月「途中で、壊れた太陽ドームにたどり着くシーンがありましたよね」

 

fee「ありました」

 

仔月「だから、本当にラストの太陽ドームは壊れていなかったのかな?とずっと思っていて。明示されていないのでわかりませんが、幻を見ているのかなと思っちゃいました」

 

fee「2個目の太陽ドーム自体にはたどり着いたんですか?」

 

仔月「たどり着いてはいると思います」

 

fee「たどり着いたけどまた壊れていた?」

 

仔月「また壊れていて、とうとう隊長の精神がやられてしまったのかも」

 

fee「
黄色いドアの前に立った。『太陽ドーム』と彫り込まれた文字
という段落があります。ここの、『一歩踏み込んだ』までが事実で、『目を四方に走らせる』からの文章は隊長の幻覚というのが仔月さん解釈でしょうか? そういうふうに読めなくはない、ですねw

 

仔月「ww 隊員が次々に狂気に陥っていく話なのかなと思って。隊長だけがその例から漏れるというのも」

 

fee「ピカードという人はおかしくなっちゃったけど、全員がおかしくなったわけではないような……」

 

仔月「最初の人は電気嵐が来た時に、うっかり立ち上がって黒焦げになって死んでしまって、次の人は雨で皮膚感覚がおかしくなって、自失状態になって脱落します。残りの一人は、『自分はダメだから置いていって下さい』と言って脱落して、隊長だけが太陽ドームにたどり着きました」

 

fee「おかしくなったのはピカードさんだけじゃないですか(苦笑)。最初の人もおかしくなったのかもしれないけど。まぁでも、隊長もピカードさん状態になっちゃった可能性はあります」

 

仔月「はい」

 

fee「この話は、情景描写が凄く丁寧で良いなぁと思います。雨にひたすら降られるいやーな描写があるからこそ、太陽ドームのありがたさ、幸福な太陽の描写も生きてくる。

ブラッドベリは丁寧な情景描写も書けるなぁと感心しました」

 

仔月「なるほど。違うテイストの作品が短編集に1つぐらい混ざっているのは、良いですね」

 

fee「ちなみに、この作品からはブライアン・オールディスの『地球の長い午後』という作品を連想しました。こちらも情景描写が凄く良いので、『長雨』みたいな、星の描写をじっくり描く作品が好きな方にはお勧めです」

 

仔月「わかりました」

 

fee「僕は、気が短いので、情景描写が長く続くと、早く先の展開に行けよと思う事もあり。でも、この作品はその情景描写が命の作品なので」

 

仔月「雨の描写が、好きです」

 

fee「僕も嫌いじゃないです」